伝統と先端を融合し進化し続けるThe Arya Vaidya Pharmacy (Coimbatore)視察記
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オイルの使用感に魅せられて
アーユルヴェーダを学ぶために最初に南インドを訪れたのは2006年でした。
当時は日本でアーユルヴェーダオイルを入手することが難しい時代でしたので、街中にたくさんアーユルヴェーダオイルが売られている様子に驚いたものです。
アーユルヴェーダオイルは薬局(メーカー)によって色や香り、テクスチャー、そして使用感も変わるため、あちこちのお店で買い求めてきました。そして気がつけば約15年かけて南インドで販売されているオイルはほとんど試したと思います。
その中でのお気にいりはケーララ伝承医の教えと伝統製法を守り続ける2つの製薬会社のオイル。
とにかく使用感が良くて、他のマッサージオイルに代えられないアーユルヴェーダオイルです。
そのうちの一つであるThe Arya Vaidya Pharmacyのオイルは香りが新鮮で、肌馴染みもよく、使用後の感触も素晴らしくて、2016年から継続して愛用してきました。
AVPオイルの一ファンであったアーユルヴェーダセラピストの教科書。光栄なことにありがたきご縁が繋がり、2022年3月23日-24日にThe Arya Vaidya Pharmacyの視察訪問をさせていただいてきました。
アーユルヴェーダ伝統製法を再現する製造施設
コインバトール駅から電車で約1時間、車で約1時間半ほどの場所ケーララ州カンジコーデにThe Arya Vaidya Pharmacyの製造施設があります。
製造施設に到着し出迎えていただいた役員や現場責任者の方々にご挨拶。
The Arya Vaidya Pharmacyのオイルを日本でも購入できる機会をいただけたことに心から感謝を伝えました。
その後に80年近い歴史を誇る伝統製法を再現する施設を視察。
まず教えていただいたのは、カンジコーデという場所は西ガーツ山脈沿いの新鮮なハーブが豊富で、土地の汚染が少なく清浄な水に恵まれているとのこと。これは良質なアーユルヴェーダ製剤を製造するための重要条件です。
案内していただいたアーユルヴェーダハーブの香りが充満する施設では生ハーブの処理から、煎じ液、パウダー、オイル、舐め剤、発酵製剤などおよそ500種類の製剤を製造しています。全ての工程で伝統製法を忠実に再現できる機材を導入し、手作業とのコラボレーションが見事です。
アーユルヴェーダセラピストの教科書は、今までにいくつかのアーユルヴェーダ製剤製造施設を視察してきましたが、このような設備は他ではみたことがありません。革新的伝統製法再現施設に本当に驚きました。
AVP製品の信頼を支える品質管理システム
その後に移動した品質管理棟は、室内の空気汚染を防ぐための空気循環システムが導入され、製品の成分分析を行ったり、製造施設で作られた製剤を保管したり、商品のパッキングなどを行っていました。想像の遥か上をいく清潔感、そして徹底した品質管理が行われています。
この施設での製造過程一連の様子を見て、なぜThe Arya Vaidya Pharmacyのオイルの香りが新鮮で、肌馴染みもよく、使用後の感触も素晴らしいのか、理由がよくわかりました。
現代の技術を上手に融合し、材料の状態や環境の影響を受ける伝統製法オイルの品質を一番良い状態に保つ工夫と努力をされているからなのですね。
AVPグループ施設の様子
カンジコーデの製造施設にはハーブガーデン[ AVP Herbal Garden – Center For Indian Medical Heritage]が併設されています。ここには代表的アーユルヴェーダハーブだけではなく、現在では希少になってしまった原種のハーブも展示や調査目的で栽培されています。ご案内くださったシャシクマールさんのハーブ分類に関するお話がとても興味深く、次回ゆっくり勉強させていただきたいなと思いました。
カンジコーデからコインバトールに戻る途中で立ち寄ったのが[Saranya Ayurveda Hospital]。広大な敷地にあるホスピタルで、アーユルヴェーダ治療のための滞在だけでなくアーユルヴェーダトレーニングプログラムがあるため、海外からのゲストも沢山いらしているとのことでした。
翌日は、コインバトール市内から車でおよそ45分ほどのマンガライのパタンジャリプーリ(ヨガスートラのパタンジャリが瞑想していたとされるアナイカッティ・ヒルの麓)にある[AVP Patanjalipuri]へ。可愛いドーム型の建物が印象的で、昔ながらのグルクラシステム(師とともに暮らしながらアーユルヴェーダを学ぶ)を再現した教育機関でもあるそう。
ここに滞在してアーユルヴェーダトリートメントを受けたら心の洗濯もできそうな、素敵すぎるアーユルヴェーダヴィレッジです。
最後はAVPのコインバトール本部でもある[The Arya Vaidya Chikitsalayam & Research Institute (AVCRI)]を訪問。
120床の入院施設だけでなく広々とした外来部門は専門科に分かれ沢山の患者さんがいらっしゃいました。またリサーチ部門や教育部門も併設。コインバトールの中心地にあるにもかかわらず、敷地の中庭には薬木や薬草が生い茂っていました。緑豊かで鳥のさえずりも聞こえます。 同敷地内にはアーユルヴェーダの神様ダンヴァンタリー を祀る立派なお寺もあり、伝統的アーユルヴェーダの全てを集結させたと言っても過言ではない素晴らしい場所でした。
故P.R.クリシュナクマール氏の偉大なる功績
1943年、マハートマガンジーのハンガーストライキ運動が起こった年であり、第二次世界大戦の真っ只中にThe Arya Vaidya Pharmacyは Arya Vaidyan P.V. Rama Varier氏によって創設されました。
創設当初よりケーララアーユルヴェーダ伝承医によって受け継がれ続けるアーユルヴェーダを世界に届けることを目標にしていたそうです。
今回The Arya Vaidya Pharmacy各施設を視察訪問させていただき、随所に創設者の強く熱い想いを感じることができました。ケーララアーユルヴェーダ伝承医が守り続ける哲学とともにある医学、そしてスピリチュアリティ。
移り変わりゆく時代の中で、初志貫徹するのはそう簡単なことではなかったはずです。
The Arya Vaidya Pharmacyの運命を変えたとも言える創設者の息子であるP.R.クリシュナクマール氏(2020年没)。長年に渡る彼の活動は、アーユルヴェーダの伝統の素晴らしさを世界に広げるだけではなく、環境保全、現代医学との協力による研究など、多岐にわたります。また未来を担うアーユルヴェーダ医師及び専門家育成にも尽力し、2009年にはインド国民栄誉賞であるパドマシュリー勲章を受賞、その他にも数多くの賞を得ています。
父である創設者 P.V. Rama Varier氏の想いを見事に形にし、何千年と続くアーユルヴェーダを支えてきた数多くの医師達の功績を讃え、現代に貢献してきたのです。
The Arya Vidya Pharmacy視察訪問を終えて
パドマシュリーP.R.クリシュナクマール氏亡き後、創設者P.V. Rama Varier氏の孫であるC. Devidas Varier氏のリーダーシップによりThe Arya Vaidya Pharmacyは進化を続けています。
光栄にも今回の訪問でアーユルヴェーダセラピストの教科書もC. Devidas Varier氏にご挨拶をさせていただくことができました。日本に沢山のAVP製品ファンがいること、またケーララ伝承アーユルヴェーダを学び深めたい人達がいることをお伝えすると、とても喜んでくださいました。
彼もまた祖父であり創設者であるArya Vaidyan” P.V. Rama Varier氏の想いを受け継ぎ、世界にアーユルヴェーダの伝統を伝え貢献することに生涯を捧げようとしていることを知り、胸が熱くなりました。
先人の想いをバトンにし、それぞれに創意工夫しながら時代に必要とされることを形にしていくAVPはこれからも新しい挑戦を続けていくはずです。