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土地とドーシャとプラクリティ

アーユルヴェーダでは、生まれつきのドーシャバランス(プラクリティ)を基準にドーシャバランスを整えることで健康維持ができると考えます。 

プラクルティの決定要因には精子や卵子のドーシャバランスや母親の食習慣などがありますが、居住環境や生活習慣、また土壌からの影響を受けています。アーユルヴェーダにはデーシャ(場所)の分類があり、場所ごとの特徴や状態を把握し、場所に合った食生活やハーブ、トリートメントなどの選択基準があるとしています。 

デーシャ(場所)コンセプトについて 

アーユルヴェーダでは、デーシャは二つの意味で使われます。 

  • ブーミ デーシャ(土地):土地ごとに異なった性質は、そこに育つ食べ物やハーブ、居住する人に影響を与えます。 
  • デーハ デーシャ(身体部位):不調が身体のどこで起きているかを特定することによって、適切なハーブや施術方法を選ぶことができます。

 

ブーミデーシャ(土地)は、居住者の食生活、身体の強さ、寿命の長さ、精神の状態などに影響を与えると考えられるため、プラクリティにも影響を与えると考えられます。

ブーミデーシャ(土地)の分類と特徴

アーユルヴェーダ文献によるブーミデーシャ(土地)の分類と特徴は以下のとおりです。

(チャラカ サンヒター カルパスターナ1  / スシュルタ サンヒター スートラスターナ35 より)

ブーミデーシャ
(土地の分類)          
特徴 優勢ドーシャ 
ジャンガラ
(乾燥帯)  
・雲が少なく、常緑樹に覆われた土地 
・吹く風は熱い 
・荒い砂利や石の多い乾燥した土壌 
・水源に乏しいが水は澄んでいる。
・鹿やロバのような大きな動物が多く生息している 
・辛味、苦味、渋味の植物(ハーブ)が育つ 
・居住者の、体は頑丈で痩せ型であり、ヴァータ、ピッタの体質
・病気になりにくく、長寿である
・ヴァータ、ピッタに起因する病気に苦しむ 
ヴァータ 
アーヌパ 
(湿地帯) 
・標高が低く、海に近い土地 
・川や湖が多くあり、緑に囲まれた土地 
・土地の表面は凸凹で、川も雨も豊富である。
・湿潤な気候で季節ごとに様々な花が咲き、果物が実る 
・湿気を含んだ土壌で、甘味、酸味の植物(ハーブ)が育つ 
・居住者は体が大きく、脂肪がついていて、ヴァータ、カパの体質 
・消化力が弱く、体が弱い 
・カパ、ヴァータに起因する病気に苦しむ 
カパ 
サーダーラナ
(中間帯) 
・乾燥帯と湿地帯両方の特徴を持つ 
・土壌は灰色、赤色、黒色のいずれかで、乾燥しすぎることもなく湿りすぎてもいない 
・土地は肥沃で、あらゆる種類の木々や作物を育むことができる
・土地のドーシャはバランスのとれた状態に保たれ、それは居住者のプラクルティに反映されている。 
バランス
     

(注)デーシャの分類と優勢ドーシャには文献により違う見解や説があります。

-アーヌパデーシャ:ヴァータ-カパ由来の病気を起こしやすい 
-ジャンガラデーシャ:ピッタ-ラクタ由来の病気を起こしやすい

ヨーガラトナーカラ Deśa Jñānam 3-4

デーシャの6分類
①ジャンガラ(森林帯) -ヴァータ優勢 ②パールヴァットヴァ(丘陵帯) -ヴァータ・カパ優勢 ③サイカット (乾燥帯)-ヴァータ・ピッタ優勢 ④ サインダヴァ (沿海) -カパ・ピッタ優勢 ⑤アーヌパ(湿地帯) -カパ優勢 ⑥マッディヤ (中間帯)-ドーシャバランス


また、土地に適した食生活については以下のような記述もあります。 


deśānāmāmayānāṁ ca viparītaguṇaṁ guṇaiḥ| sātmyamicchanti sātmyajñāśceṣṭitaṁ cādyameva ca 
その土地で生産されたものは、そこで生まれ育った人に適した食べものである  

チャラカ サンヒター スートラスターナ 6-50 

viruddhaṁ deśatastāvadrūkṣatīkṣṇādi dhanvani| ānūpe snigdhaśītādi bheṣajaṁ yanniṣevyate
乾燥帯では軽性、温性の食べものは不適切であり、湿地帯では重性、冷性の食べものは不適切である。 

チャラカ サンヒター スートラスターナ 26-88 

日本のブーミデーシャについて

以上の記述から、私たちの住む日本はアーヌパ デーシャ(湿地帯)でカパが優勢な土地だということが推察されます。 食べものは育成環境としてブーミデーシャ(土地)の影響を受けるため、日本で生産される作物もカパが優勢なものが多くなると考えられます。 
例)日本米は海外の米と比べてでんぷんの種類が異なり、カパの性質である甘味や粘り気が強いといった特徴が見られます。 

伝統的な和食は日本米を主食に、塩味の強い醤油や味噌が調味料としてよく使われるため、和食自体はむしろカパを増やすとも考えられます。しかし、かつての日本人の生活は農作業をはじめとした肉体労働中心で運動量も多かったこと、また食べ慣れた食事はドーシャへの影響も少なくなる(オーカサトミャ)と考えられるため、日本人はドーシャバランスを保てていたとのではないでしょうか。 

現代の日本では、運動量が少なくなり、飽食となった結果、カパの増悪による生活習慣病などの不調が目立ちやすくなっているようです。アーヌパ デーシャ(湿地帯)に住む私たちにとっては、体力に合わせな運動が必要不可欠です。また辛味、苦味、渋味などカパを鎮静する味を取り入れた食事で、カパをバランスさせる工夫をすることで、健康維持を測ることができると考えられます。 

ブーミデーシャに関する論文

ブーミデーシャ(土地)について、食生活、生活習慣、病気の治療といった側面から健康に与える影響について検証した論文を集めました。 健康維持に役立てられる内容が記載されていますのでご参考にされてみてください。

ブーミデーシャが居住者のプラクリティに影響を与え、罹りやすい病気の種類に関係することを示唆した論文 
「ブーミデーシャについて:健康と病気との関連」 

 

ブーミデーシャ(土地)の分類の説明と生活や健康がどのように影響を受けるか示唆した論文 
「ブーミデーシャ(土地)が私たちの健康にどのような影響を及ぼすかについての説明」 

 

アーユルヴェーダの古典ごとに書かれているブーミデーシャ(土地)についての説明と現代の地質に照らし合わせた論文 
「ブーミデーシャ(土地)の詳細説明」 

 

健康維持と病気の治療にはデーシャと相反する性質を考慮する必要があることを示唆する論文 
「デーシャの知識の重要性と適用」 

 

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まとめ

ブーミデーシャ(土地)は作物や居住する人のプラクリティにも影響を与えると考えられます。住む場所からの影響を無視した生活を続けることは健康問題のリスクを高める可能性があります。ブーミデーシャ(土地)のコンセプトは日本人(日本に居住する人)に合った生活へのヒントを示し、健康的な生活についての考え方を教えてくれます。ドーシャバランスやプラクリティにあった生活習慣を見直す際には、デーシャ(居住地)も考慮していきましょう。

 


 

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