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アビヤンガの独自性とアロマトリートメントとの違い

アーユルヴェーダではヴァータドーシャが原因となり多くの不調が起こると考えます。油剤(スネーハ)はその性質からヴァータドーシャを鎮める最良のものとされ、内外から取り入れることでヴァータ由来の不調に有効だと考えられています。  アビヤンガは、その目的、施術方法、使用オイルの性質や製法などから、他のオイルトリートメントとは違う独自性の強い施術(油剤法:スネーハナ)であるといえます。 

アビヤンガとアロマトリートメントそれぞれの目的と方法

自然の原料から作られるオイルを使う、健康促進に効果がある、などという点から、アビヤンガはしばしばアロマトリートメントと混同されることがあります。
両者の違いは大きく分けると以下のようになります。 

 アビヤンガ アロマトリートメント 
施術の目的 油剤法(スネーハナ)による浄化療法(パンチャカルマ)の準備、または健康維持や向上 植物の芳香成分による健康促進 
使用するオイルの量 大量 (100ml~)少量(10ml のキャリアオイルに数滴の精油を混ぜて使用) 
施術のプロセス 油剤を血流に沿って擦り込むことで、油剤を浸透させる ・発汗法と合わせるオイルを潤滑剤として使用する
施術の方法 手のひらでオイルを擦り込む 手技(手指)を使って施術を行う 
期待される効果ヴァータドーシャ鎮静 (乾燥性、軽性、冷性のバランスを整える)  オイルトリートメントによる保湿効果 ・アロマオイルによるリフレッシュ効果 など 

このようにアビヤンガは油剤の性質や作用を利用して体のバランスを整えます。 
また油剤の浸透を目的にするため発汗法と合わせて行われることも大きな特徴になります。 

また古典文献には以下のように利点が挙げられています。  

  • 早期老化を防ぐ(Jarāhara)  
  • 疲労回復(Śramahara)  
  • ヴァータドーシャ鎮静(Vatahara)  
  • 目の機能向上(Dṛṣṭi Prasadakara )  
  • 寿命を伸ばす(Ayushyakara)  
  • 肌を健康にする(Tvak Dandhyakara)  
  • 眠りの質を高める(Svapnakara)  
  • 身体強くし変化に対応できる(KleśaSahatva) 
  • 外傷からの回復力向上(Abhighāta Sahatva)  
  • 汚れを取り除き肌色をよく強くする(Mṛjavarṇa Balaprada) 

引用元:チャラカサンヒタースートラスターナ5/81-89  アシュターンガフリダヤスートラスターナ2/8 

※古典文献による記載は医学的根拠や効果を保証するものではありません。

<参考記事>
アーユルヴェーダトリートメント[アビヤンガ]

アビヤンガで使用するオイルの性質

アビヤンガに使われる油剤はハーブの葉や根、幹などのエキスをオイルに同化させる独自の製法で作られます。オイルの種類には、グリタ(ギー)や タイラ(セサミオイル)などがあり、油剤はハーブとオイルによる独特の性質や作用があります。
アビヤンガでは体調や体質に合わせたオイルが使用されます。 

アビヤンガで使用するオイルの種類: 

アーユルヴェーダオイルはベースとなるオイル自体にも選択の基準があります。目的に合わせたオイルを選ぶためには、まずベースになるオイルの特徴から確認します。

オイルの種類 ベースになるオイル オイルの性質 オイルの作用 
グリタ ギー ムルドゥ(柔性) シータ(冷性) ピッタとヴァータを鎮静 
タイラ セサミオイル ティークシュナ(鋭性) ウシュナ(温性) ヴァータとカパを鎮静 
ケーラココナッツオイル ピッツィーラ(粘稠性) シータ(冷性) ピッタとヴァータを鎮静 
クリャンブ ヒマシ油 セサミオイル ギー スークシュマ(微細性) ウシュナ(温性) カパとヴァータを鎮静 

これらオイルの性質に多様なハーブが加わる伝統的なオイル製法により独特のアーユルヴェーダオイルが出来上がります。

※アーユルヴェーダの伝統製法にアルカという蒸留法がありアロマオイル抽出法にとてもよく似ています。ただしアロマオイルを採取する方法や使用法は言及されません。

アビヤンガの効果に関する論文 

アビヤンガについてアーユルヴェーダ古典文献が言及することを裏付けるような検証も行われています。

セサミオイルを使ったアビヤンガを施術した結果、ヴァータ鎮静効果と痛みの緩和につながった臨床実験リポート
「変形性関節症の痛みの緩和とヴァータ鎮静に対するセサミオイルを使ったアビヤンガの効能について」 

アビヤンガの施術法、使用するオイルの種類の詳細説明
「アビヤンガの重要性とその他のマッサージとの違い」 

セルフアビヤンガの身体的効果に関する論文 
「ディナチャリヤーにおけるアビヤンガの役割」 

まとめ

アーユルヴェーダではヴァータのバランスを整えることを重要視しています。
そのため、油剤法(スネーハナ)の一つであるアビヤンガは、健康維持のために欠かせない施術であり生活習慣の一部にも位置付けられます。
一方のアロマオイルを利用したトリートメントは「香り」によるリフレッシュ効果を期待した施術として区別をする必要があります。
近年ではコスメティック分野でアロマオイル利用のアーユルヴェーダ商品が開発されるようになったこともあり、混同しやすくなっていますが、アビヤンガ本来の目的や施術法、使用オイルなどを深く理解し提供を行っていきましょう。


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