皮膚の健康とアーユルヴェーダ
皮膚は人間の臓器で最も大きいものだとされています。
皮膚は体内の臓器を保護し、外部の脅威から身体を守り、体温を維持し、また感覚器官としての役割も果たします。
アーユルヴェーダでは皮膚に現れる様々な兆候は心身の状態を反映していると考え、アーユルヴェーダのスキンケアは現代のコスメティックやスキンケアの方法と比べて、よりホリスティックなアプローチを行います。
Contents
アーユルヴェーダにおける皮膚の形成
皮膚はどのように形成されるのでしょうか。
アーユルヴェーダでは、皮膚は母親由来の臓器と分類されています。
スシュルタは、皮膚の発生を牛乳を例に説明します。
牛乳を加熱するとたんぱく質が固まり薄い膜ができるように、受精卵が形成される過程で発生する熱により皮膚が現れると表現しています。
胎内で育まれた皮膚はその後、栄養と自らの代謝の力によって維持されていきます。
皮膚の層についての見解
現代では皮膚は三層(表皮、真皮、皮下組織)に分類されていますが、アーユルヴェーダでは更に細かな分類をしています。
チャラカによれば6層、スシュルタ、ヴァーグバタによれば7層です。
このうちスシュルタの7層説は後続の文献にも影響を与え現代アーユルヴェーダの臨床でもよく活用されています。
- アヴァバーシニー(Avabhāsinī)
皮膚の一番外側にある層。ドーシャがこの層に影響を与えると吹き出物、ニキビ、フケなどが発生。 - ローヒタ(Lohita)
皮膚の2番目の層。”赤い”という意味。ドーシャがこの層に影響を与えるとほくろやクマ、黒い色素沈着などが発生。 - シュヴェター(Śvetā)
皮膚の3番目の層。ドーシャがこの層に影響を与えると湿疹やアレルギー性発疹が発生。 - タームラ(Tāmra )
皮膚の4番目の層。”銅”という意味。ドーシャがこの層に影響を与えると白斑やハンセン病が発生。 - ヴェディニー(Vedinī)
皮膚の5番目の層。ドーシャがこの層に影響を与えるとヘルペスが発生。 - ローヒニー(Rohiṇī )
皮膚の6番目の層。ドーシャがこの層に影響を与えると癌、腫瘍、象皮病などが発生。 - マムサダーラ(Mamsadhāra)
皮膚の7番目の層。ドーシャがこの層に影響を与えると膿瘍や瘻孔などが発生。
以上7層の皮膚はラクタダートゥ(血液組織)のから栄養を受けたマムサダートゥ(筋肉組織)のウパダートゥ(副組織)です。
すなわち皮膚はラサダートゥとラクタダートゥの質を映し出す鏡となり「輝く肌は良質なラサとラクタの結果」と言えます。
皮膚とドーシャ
皮膚はヴァータの座です。
ヴァータ(プラーナ・ヴァータ)の通る微細な道が皮膚全体に広がっているため「触覚」を感じることができます。プラーナ・ヴァータが触覚のインパルスを心や知性に伝えることで、身体に反応が起こります。寒い時に鳥肌が立ったり、暑い時に毛穴が開く身体反応はヴャーナ・ヴァータが支えています。
皮膚の血色(顔色)はウダーナ・ヴァータが正常に働くことにより維持されます。そして、皮膚に十分な栄養を供給するために胃腸の働きを支えるサマーナ・ヴァータが働いています。サマーナ・ヴァータが不調を起こすと肌が乾燥しやすく荒れやすくなるとされます。残るアパーナ・ヴァータは体内の余分な水分や粘液を排泄します。この機能に障害が起こると体内の水分バランスが崩れ皮膚を健康に保つ汗に異変が起こります。
また、皮膚の輝きを支えるピッタ(ブラージャカ・ピッタ)だけでなく、血液を支えるピッタの機能も皮膚の健康に大きな影響を与えています。
カパの[水]の要素である油性や液状性は皮膚に柔らかさを与え皮膚の健康状態を支えています。
皮膚とダートゥ(組織)
ラサ・ダートゥは皮膚を滋養しラクタ・ダートゥは肌色や触覚を支えます。
また、その他のダートゥから生まれる副ダートゥや老廃物の排泄や出口として皮膚が役割を果たします。
皮膚の状態とケアについて
生まれつきのドーシャバランスや年齢や環境の変化などによっても皮膚の状態に変化が現れます。
そのため、スキンケアを考えるときにドーシャバランスを整えることが前提になります。
具体的には、生活習慣を整えるディナチャリヤの実践や食事習慣、質の良い睡眠などです。
加えて外部からのケアで皮膚を清浄にし、健康を取り戻していきます。
以下はドーシャの影響の現れた皮膚に推奨される外部からのケアです。
ドーシャ | 皮膚の状態 | 外部ケア |
VATA | 乾燥肌、くすみ、黒みがかった肌 | 水分補給、ギー、オイル、ぬるま湯洗顔 |
PITTA | 敏感肌、柔らかく温かい肌 | ソフトスクラブ、アロエヴェラ、ローズウォーター、冷水洗顔 |
KAPHA | 脂性肌、厚みのある肌、明るく冷たい肌 | スクラブ、クレイorハーブパック、アロエヴェラ、スチーム洗顔 |
※皮膚のケア(内部&外部)に使用できる代表的ハーブ例:アムラ、ヤシュティマドゥ、グドゥチ、サフラン、ニーム、マンジシュタなど
皮膚の健康に関するアーユルヴェーダ論文
以下はアーユルヴェーダの皮膚生理学や解剖学、また皮膚疾患に関する論文です。少し難しく感じるかもしれませんが、アーユルヴェーダのスキンケアや皮膚治療の考え方などが理解しやすくなりますのでぜひチャレンジしてみてください。
アーユルヴェーダの観点から皮膚の役割や構造、病気に関しての文献検証論文
「皮膚に関する概念研究の検証」
皮膚の役割や構造についてアーユルヴェーダの説明および主な皮膚疾患に対するケアに関する論文
「アーユルヴェーダのスキンケア」
アーユルヴェーダ文献に記載された皮膚組織の詳細に関する研究論文
「アーユルヴェーダの皮膚組織についての生理学研究」
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まとめ〜皮膚の健康を守るために
アーユルヴェーダにおける皮膚の構造や生理学的視点からわかるように、アーユルヴェーダの定義する心身の完全な健康(ドーシャ、ダートゥ、マラが安定した状態であること、心が清らかであること)を達成することが皮膚の健康にも繋がります。
「美肌」を手に入れるための”特別なこと”をつい探したくなりますが、アーユルヴェーダは365日変わることなく営まれる日常生活の維持が何より重要であることを教えてくれています。
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